オーブ壱 夏休み中の娘共に付き合い、プールに出かけたのはいいんですが、 ついうっかり三百メートルを全力で泳いでしまったため、今まで果てていました さて、オーブの話でした 長文の連続になるかと思いますので、関係者以外は読み飛ばしてもらってかまいません オーブとは英語ではorbで球とか宝珠とか目玉(通常複数形)の意味ですが、 元々はラテン語で円とか環とかの意味です もちろん、こんなこと知らなくっても全然かまいません オーブ連合首長国を思い出される方もいるかも知れませんが、関係ありません フランスにはオーブ県というのが実在します このオーブはAube、フランス語で夜明けの意味だとか・・・これも関係ありません ましてや、花王さんの某製品も全く関係ありませんですね ぜんぜん本題に入ってないけど続きます ================================================ オーブ弐 さて、オーブが心霊現象ではないと主張される方はだいたい概ね カメラメーカーのいう埃や水滴説を採られるようですが、 青い猫さんの主張は、イデオロギー的なものを除けば、 ・埃などが原因なら、写した全てに写らなければならないのに写っているのは一部の写真(>>30) ・その3は滝壺(暗いところ)なので、フレアではありえない(>>30)(光の強弱には依存しない(>>42)) ・その6は水滴でないことは確認済みで、他の雨天時の撮影(フラッシュで複数の玉再現)と異なる(>>42) ・埃ならば埃の量に比例するはずだが、比例しなかった(>>42、>>75) ・埃や雨滴であれば肉眼で見れるが、写真に写った玉模様は肉眼では見えないものが写った(>>62) てなもんでしょうかね >>136の物陰に隠れるオーブ >>172の肉眼で見るオーブ については、とりあえず、今はおいておきましょう 続きます ================================================ オーブ参 回転するジャガイモを想像してみましょう ジャガイモを知らない方はいないと思いますが、ナス科ナス属の植物で、通常食用とする地下茎を指して、ジャガイモと称します 芽や緑色を帯びた皮に毒があることはよく知られていますが、それほど強い毒性ではないので、 呪いを実行に移す場合は他の毒を検討された方が賢明に思います 一口でジャガイモと称してもいろんな品種がありまして、 男爵薯はころころしたイメージで煮くずれしやすいため、潰してコロッケなんかにしますが、 ここではひとつ、煮くずれしにくく、日本のカレーなんかによく使われるメークインあたりを想像して頂きたいと思います そう、比較的細長くて、男爵薯ほどでこぼこも激しくない奴です このメークインを宇宙のどこかで、地球からなんとか見えるところにポツンとおいてみましょうか 当然、メークイン君は、固有の公転軌道と、自転をすることになります ということで、次回、メークイン君の宇宙の旅につづく ================================================ オーブ四 宇宙で独りぼっちのメークイン君を地球から見たらどう見えるでしょうか まず、その距離からその形状を直接見ることは不可能でしょう 単なる微弱な光の点としか見えないでしょう その光点の地球から見える位置を継続的に観察していれば、 その光点の公転軌道を特定することは容易でしょう その次に、観察者は地球・太陽・光点の相対位置を考慮に入れても光点の明るさが一定でないことに気付くでしょう 原因としては、 ・膨張したり、収縮したりする星である ・明るい部分と暗い部分のある星が自転している ・反射率が時間によって変わる物質で出来た星である ・その星に住んでいる生命体の仕業である など、いろいろ考えられます 我々は、それがジャガイモなのを知ってますから、明るさが一定でない理由は判りますが、 観察者にはその原因を特定することができません そこで、その光点に「イトカワ」という名をつけて、エンジンのテストを兼ねた「はやぶさ」と 名付けた宇宙船を調査に派遣することになりました つづく ================================================ オーブ五 本物の「はやぶさ」君は、地球への帰還の長い旅の途中で、地球から見て太陽のほぼ反対側の 火星軌道より弱冠内側あたりを航行中です エンジンを停止した状態、つまり慣性航行中で、満身創痍の躰を休めていると言ったところでしょうか それはともかく、ジャガイモのような物体が回転している場合に太陽光をうけて、 その明るさがどのような変化をするかについては、イトカワの観測例が豊富にありますので、参考にされたいと思います さて、地上に戻って、宙を舞う埃について、どんな形をしているかご存じでしょうか また、雨滴の形状についてご存じでしょうか 埃が何物かってのは特に決まっている訳ではありませんが、 普通の日本語では、糸くずや毛髪、フケ、ダニやその排泄物、カビの胞子なんかが空中を浮遊している状態や 隅っこに堆積している状態をいいます もちろん、今、話題にしているのは空中をふわふわ漂っている方ですね 形状は千差万別、大きさも同様なのは、上の説明で理解出来ると思いますが、概ね目で見ることが可能な 大きさの物をいうようです(ちなみに煙草の煙の粒子の大きさは0.4ナノメートルですが、埃と呼ばれる物はもっと大きいです) つづく ================================================ オーブ六 実際には空中には埃と呼ばれるものよりも小さくて、通常目で見ることは出来ない粒子が沢山浮遊していますが、 これらを含めた浮遊物(および堆積物)を塵と称するようです さて、また話は変わりますが、ダイヤモンドダストという気象現象をご存じでしょうか 日本語では細氷といい、降雪の一種で非常に小さな氷晶が降る現象ですが、日の光を受けてキラキラ輝くことから ダイヤモンドダストと呼ばれているようです 知らない、見たことないという方のために、ダイヤモンドダストの写真を示しておきます、 とりあえず、今は「まぁ、きれい」とだけ言っておきましょう http://www.yachiho.com/imege/t-photo90.jpg http://lazycamera.com/media/1/20060503-P5030779.jpg http://blog-imgs-27.fc2.com/b/u/r/burarikaruizawa/20061219015902.jpg http://blog-imgs-11.fc2.com/m/o/o/mooncafe8/!cid_000701c772d3$a70b9ad0$0201a8c0@yasuda.jpg ダイヤモンドダストを形作る氷晶は、水蒸気が昇華したものですから、基本は雪と同じく六角形ですが、 雪のような雪印(変な言い回しだなぁ)には成長せず、六角柱を基本としたものになるようです 従って、氷晶には概ね六面の平面があり、これが鏡となって、キラキラと輝くことになります 輝いていない時はほとんど光の反射が観測者の方に行っていませんので、まず見えません つづく ================================================ オーブ七 ところが、人間の目というのは実にすばらしくいい加減に出来ていますので、光の明滅の速度が 一定以上に早くなると、明滅していることを認識出来なくなります 商用電力で点く蛍光灯は、西日本では一秒間に百二十回、東日本では百回明滅を繰り返して いますが、この明滅を目で直接認識出来る人はまずいないと思います が、蛍光灯と目の間で手をひらひらと動かせば、その手の見え方で間接的に蛍光灯が明滅している ことを確認出来ます ダイヤモンドダストがキラキラ輝くと表現されている以上、その明滅は人間の目で認識出来る程度 の速さであると言うことが言えます 劇場用フルアニメはともかく、テレビアニメは概ね秒間8コマ相当で作られていますが、中には 動きとしてではなく、一枚一枚の絵の違いが見えるという人もいますので(私だよ)、 ダイヤモンドダストの明滅も早くてもその程度だと思われます なお、明滅の明の持続時間は、氷晶の大きさを微少とすれば、回転速度(明滅の速度に比例)と、 観測者と氷晶との距離および受感部長さ(肉眼であれば虹彩の中心部の瞳孔、カメラであれば絞り によって開いている穴)によって決まりますが、観測者と氷晶との距離に比べて受感部長さが極端に 小さいことから、その持続時間は極めて短いことが理解出来ると思います つまり、輝いて見えるのは、実はほんの一瞬というわけですね つづく ================================================ オーブ八 さて、ダイヤモンドダストの説明と、何かの説明が似ていることにはもうお気づきのことだと思います >空気中には、いつもかなりの塵や埃が舞っています。映画館で、投影機の光の中に、 >それらがキラキラ光っているのを見た経験はあると思います。 青い猫さんが>>71で示してくれたカメラメーカーのサイトからの引用です ついうっかり埃を舞上げてしまい、それが太陽の光を受けてキラキラ輝いて見えたという経験をもった方もいらっしゃると思います 前に出した、ジャガイモのメークイン君の場合は、太陽の光が当たっている部分が見えている面積に その明るさは比例するとして差し支えないと思いますが、 これでは暗い時と明るい時の明るさの比はせいぜい十倍くらいでしょうか この程度では「キラキラ光る」のような表現にはならないでしょう 塵や埃(前に出した言葉の意味からすれば、埃は塵に含まれますが)の中には氷晶のように 平面の反射面を持つものがあり、その反射光が観測者の方を向いた時に明るく輝くと考えた方がよいように思います では、繊維の破片、すなわち糸くずにそのような反射面があるのか 木綿ではどうかなと思いますが、化繊ならあり得るんじゃないでしょうかね 毛髪の場合、天子の輪を作るキューティクルが剥がれたものなら、充分に可能性はあるでしょう つづく ================================================ オーブ九 ダニやその排泄物は・・・これはなさそうですね 胞子の類、これはあり得るかも知れません それ以上に、砂由来の浮遊物にその可能性があると思ったりもします 砂の中には石英の結晶が含まれていますが、石英のでっかい結晶は水晶と呼ばれるものです 石英も水と同じく六角形の結晶をつくることがよく知られていますね 言い換えれば、空気中には硝子を砕いたような小さな結晶が漂っていると言うことです さて、以上の説明で、 空気中にはいろんな物が浮遊しているが、その中の一部は 反射平面を持ち、光を反射してキラキラ光るが、光の持続時間は極めて短い ということが理解出来たのではないかと思います では、次回からはカメラの方の話しに移っていきたいと思います つづく ================================================ オーブ拾 フィルム式にしろ、デジタルにしろ、カメラにはレンズがあり、光の量を調節する絞りと 光の時間を調節するシャッター機能があるということは、あえて説明しなくてもいいかとおもいます デジタルカメラの場合、シャッター機能はフィルム式の場合と同様のメカニカルシャッターと センサーであるCCDやCMOSからの信号読みだしの部分で調節する電子シャッターの二種類が ありますが、一定時間内に受けた光の量を読み出すという意味では特に区別する必要はないでしょう フィルムにしろ、CCDやCMOSにしろ、条件はつきますが、光の量とその持続時間の 積を光の強さとして記録することで、写真としています フィルムの種類やセンサーの設定によって感じた光の強さと記録上の光の強さの比は違いますが、 フィルムの種類やセンサーの設定が一定だとすると、被写体の光量と出来上がりの写真の明るさを 決めてやれば、シャッター速度と絞りの関係が決まります シャッター速度と絞りの関係が決まれば、写したい物の性質や、撮影者の好みによって、 シャッター速度か絞りが決まり、先に決まった関係により他方が算出されます 絞り優先とか、シャッター優先とか、自動の場合でもいろいろあるようですね つづく ================================================ オーブ拾壱 シャッター速度が遅い、すなわち、シャッターが開いている時間が長ければ、カメラに対して 動いているものは流れて写ります シャッター速度が速い、すなわち、シャッターが開いている時間が短ければ、全てのものが 静止して写るようになります 絞りを開けていれば、ピントを合わせる機能はレンズだけになりますので、被写界深度は浅くなります 絞りを絞れば、ピンホールカメラの原理と同様に開口が狭いことでピントの助けになりますので、 被写界深度は深くなります 普通に昼間、風景を撮影する場合はどうでしょうね 近いところも遠いところもハッキリ写したければ、絞りを出来るだけ絞った方がよいのですが、 その場合はシャッター速度を遅くする必要があります 一方、手持ちカメラの場合は、手振れという問題がありますので、そうそうシャッター速度を 遅くする訳にはいきません そのへんを考えると、1/125とか、1/250とかのシャッター速度にして、撮影する場合が多いんじゃ ないですかね つづく ================================================ オーブ拾弐 さて、写真に写ろうと思ったら、光はシャッターが開いている間にカメラに飛び込まなければなりません 今、シャッター速度を1/125とし、ある埃の平面である反射面からの反射がカメラに向く回数を秒間8回とし、 カメラから見た反射の持続時間はシャッター速度よりも極めて短いとすると、その反射がカメラに写る 確率は0.064になります 反射の回数を秒間2回とすると、この確率は0.016にまで落ちます また、カメラに感じる光の強さですが、光の量そのものは光源からの距離の二乗に反比例しますし、 反射の持続時間は距離に反比例します 従って、カメラからの距離が倍になれば、カメラに感じる光の強さは1/8になります 嘘ですね 平面反射だから、光の量は距離に反比例すると考えた方が妥当です だから、カメラからの距離が倍になれば、カメラに感じる光の強さは1/4になります つづく ================================================ オーブ拾参 以上が青い猫さんの主張の第一と第四の回答になるでしょうか ・埃などが原因なら、写した全てに写らなければならないのに写っているのは一部の写真(>>30) に対しては、シャッター速度と反射の回数の関係で、全ての反射が写る訳ではない、むしろ希 また、カメラから距離が離れれば、カメラに感じる光の強さが激減して写らない その前に、埃が全て強反射するわけではないってのもありますね ・埃ならば埃の量に比例するはずだが、比例しなかった(>>42、>>75) に対しては、強反射の数は、埃の量だけではなく、埃の質にも関係する また、強反射の全てが写らないのは上と同様の理由 これに対して、強反射以外の埃が写らないのはおかしいという主張があるかも知れませんが、 もともと写るような光の量ではない(粒子が小さいのが原因)という回答で宜しいかと思います 計算すればハッキリすると思いますが、ある程度離れた埃の類はデジタルカメラの画素にも 満たない見かけ大きさでしょうし、はき出したすぐの煙草の煙並みに粒子が密集していなければ、 強反射に比べると遙かに暗い物は写らないでしょう つづく ================================================ オーブ拾四 次は第二の主張ですか ・その3は滝壺(暗いところ)なので、フレアではありえない(>>30)(光の強弱には依存しない(>>42)) 風景として全体的に暗いところと、強反射のもととなる太陽の光とは通常直接の関係にはありませんので、 風景がくらいからというのは意味がないでしょうね もちろん、埃の強反射が写ったものということで、ここでは話していますので、フレアではないんですが、 フレアかどうかの判断は、風景の暗い明るいでは判断しない方がいいです フレアの原因は予期せぬ方向からの光の侵入であり、その光がカメラ内で想定以外の反射屈折を行うからです 大体において、カメラのレンズは像に歪みを与えないという目的と共に、分光すなわちプリズム効果による光の 分解が写真として残らないように多レンズとなってますが、この予期せぬ屈折は分光を起こす場合が多いです 従って、青とか赤とかに偏移していたり、虹色っぽくなっていたりすればフレアの可能性大ですが、そうでなければ その可能性は少ないと判断して差し支えないと私は思いますね さて、風景が暗ければ、当然シャッター速度を遅くするか、絞りを開けるか、その両方を行うかが必要となりますが、 実は暗い風景を暗く撮りたいのであれば、これらをそういじる必要はありません 自動でとると、暗い風景でも明るく撮れてしまったりするので、自動に頼りっきりは考え物なのですが、 写り込む確率はともかく、写ってしまう強反射は、強反射の光の量と反射の持続時間で決まってしまいますので、 シャッター速度や絞りを調節しても、写ってしまう強反射の光の強さは変わりません ところで、シャッター速度を落とせば強反射が写る確率は上がりますが、滝壺だと水のしぶきの影響で、 埃自体が随分と抑えられるでしょうね つづく ================================================ オーブ拾五 さて、じゃぁなんでああゆうふうに光のぼやっとした玉みたいに写るのか、ですが、 これはもうピンぼけ以外にはありえないでしょう カメラから離れると写らないことは既に説明してますが、風景を写す時は通常焦点は遠くにあわせますね っていうより、埃の強反射が写るような近い距離に焦点をあわせるためには接写レンズとか呼ばれる 特殊なレンズが必要なんですよ 通常風景や人物を写すことを目的としたレンズでは、絶対に焦点があうことはありません とのくらいピンぼけするか 計算して示すことは多少厄介ながら不可能ではありませんし、その覚悟はしていたんですがね 「オーブ六」で挙げたダイヤモンドダストの写真 これを見れば、焦点より手前の光点が、どのようにピンぼけを起こすか、一目瞭然でしょう なお、絞りを絞ると、ピンぼけ度が小さくなり、絞りを開くとピンぼけ度が大きくなります 理由は既に説明したとおりです それでは、肉眼で見た場合はどう見えるのでしょう つづき ================================================ オーブ拾六 人間の目というのは実にすばらしくいい加減に出来ているという話は既にしましたが、 ここで、カメラと目の違いを再確認しておきましょう カメラのレンズに相当するものは、目では水晶体ということになるのでしょうが、 角膜、房水、硝子体も大気とは屈折率が異なりますので、複合してレンズの機能を果たしていると言えます カメラの絞りに相当するものは、目では虹彩となります カメラのシャッターに相当するものは、目には該当するものがありません カメラのフィルムあるいはセンサーに相当するものは、目では網膜となります カメラのボディーに相当するものは、目では強膜および脈絡膜ということになりましょうか 通常のカメラにはないものが目に備わっているものもあります 今回の話では、目は通常一対であるというのがこれに当たります 目が一対あることで、人間は立体感を感じていますが、これは別に動物不偏の能力ではありません 概ね、顔の正面に目が並んでいるタイプの動物は概ね立体感を得るために目が一対あるようです 顔の両側面に目があるタイプの動物は、概ね視界を広げるために目が一対あるようです 魚類の多くがこのタイプですから、本来はそうであったのかもしれません つづき ================================================ オーブ拾七 さて、見方はいろいろありますが、カメラと目で大きく異なるところは何処でしょう カメラはお金を出さないと自分の物になりませんが、目玉は生まれた時におまけでついてきます もちろん、そんなことは今回の話には関係ありません カメラのフィルムやセンサーは(フィルムの場合は撮影時には)平面であるが、網膜は半球状である これは大きな違いですね 視界周辺部と、写真の周辺部は根本的に像の結び方が異なると考えて良いでしょう それ以上に重要なことは、カメラのフィルムやセンサーは、その受光範囲において出来るだけ均一 な受光特性となるように作られているのに対し、網膜は場所によって大きく異なると言うことです 網膜の中心部は黄褐色に見えるため黄斑部と呼ばれていますが、その黄斑部の中心はすり鉢状に 凹んでいて、中心窩と呼ばれています 中心窩は最もはっきり見える場所で、はっきり見たいところがちょうど中心窩にくるように眼球を 動かすようになっています 網膜の光感受性受容器は錐体(cone)と桿体(rod)の二種類が知られていますが、錐体は中心窩に 高密度に分布し、周辺にいくにつれて、急速にその数を減らします 桿体は中心窩を取り巻くように、網膜周辺部に多く存在します つづく ================================================ オーブ拾八 錐体は明所視を司り、桿体は暗所視を司るとよく言われますが、錐体の外節には視物質というタンパク質 が蓄えられており、そのアミノ酸配列の違いで錐体のもつ吸収波長特性が異なります その種類としては、紫外型・青型・緑型・赤型があるようですが、哺乳類はその初期において青型と緑型 を失ったとされています 現生哺乳類の多くが色盲であるとよく言われますが、実際には紫外型と赤型の錐体により2色型色覚を持つ ものが多いようです 霊長類の場合は、紫外型の吸収域が青色側にシフトし、それに加えて赤型から変異体として派生した新緑型 とも言うべきものが緑型の吸収域をカバーするようになった結果、3色型色覚を持つようになったと言われています このように、人間の場合は3種類の錐体があり、各錐体がそれぞれの波長域の光を吸収し、電気的に興奮することで 色を感じることが出来るのです 桿体の外節にも視物質がありますが、その種類は一種類しかありません 従って、錐体がほとんど無く、桿体が多く存在する視覚周辺部は、ほとんど色を感じることが出来ません しかしながら、桿体の視物質は、光の強度に応じて段階的な化学変化を行うことで、桿体自体に光の強度に応じて 緩やかな電位変化を持つ興奮を起こさせることになります このことにより、明暗の区別は桿体が多く存在する視覚周辺部で敏感であり、桿体が少ない中心窩では鈍感なのです 実際には錐体と桿体を併せて総数一億三千万はあると言われる光感受性受容器から、視覚情報を脳に伝える たった百万しか神経繊維をもたない視神経までには網膜上に四種類の神経細胞があり、その伝達経路も簡単では ないのですが、ここでは本筋の理解に直接関係ないので割愛します 同様に、神経繊維の眼球外への出口である視神経乳頭と呼ばれる部分では光感受性受容器が一切存在せず、 盲点として知られる視覚の欠損部を網膜は持っていますが、本筋の理解に直接関係ないので割愛します つづく ================================================ オーブ拾九 錐体・桿体と区別はありますが、人が目で感じる光の強さもフィルムやセンサーの場合と 同じように、短時間においては光の量とその継続時間で決まるものとして考えて差し支えありません 短時間というのは光の明滅が区別出来ない程度の時間のことで、既に述べたように、短い人で 1/8秒程度でしょう ところが、人の目にはシャッターがありませんので、目が開いて意識を失っていない状態であれば、 たとえ光の継続時間が極めて短いものであっても、光の量と、その継続時間の積が一定値以上で あれば、光として感じることが出来ます そして、その光の明滅がある速度以上であれば、人の目はそれを連続した光として感じますし、 ある速度以下であれば、明滅する光として感じます しかしながら、明滅する光と感じても、その光の継続時間もしくは光っていない継続時間を正確に 見ている訳ではありません 更に、人間の目の虹彩は、その反応時間に難があるものの、自動的にその絞りを調節することが できる極めて優れたものであることに加え、その処理が網膜上の光感受性受容器以外の神経細胞が 行っているのか、脳が行っているのかは定かではありませんが、目に対して動いている情報について はより強調する形で、静止している情報については省略する形で認識出来るよう処理されています つづく ================================================ オーブ弐拾 可能ならば、瞬きもせずに一点を凝視してみて下さい だんだん自分が何を見ているか判らなくなります 所謂静止網膜像の消失と言われる現象で、オカ板の人が大好きなゲシュタルト崩壊とは異なる現象です まぁ、以上が大ざっぱに埃が肉眼で見える理由です さて、では人間の網膜と等価の能力(同等の能力ではないですよ)を持つフィルムやセンサーがあると したらどうでしょう 埃は写るでしょうか 答は簡単です 埃を写すための設定(ピント、シャッター速度、絞り)をしていれば写ります 普通は景色なり人物なりを写すための設定をしているために、普通に見える埃は写らない若しくは 写りにくいのです 但し、記録に残るほどの光の強さを結果的に生じさせるカメラのレンズに近い埃はピンぼけとして 写る「場合」があるのです では、目のすぐ近くにある埃は見えているでしょうか つづく ================================================ オーブ弐拾壱 答は見えているんです 見えているんだけど、とうぜん網膜上にはピンぼけの状態で投影されていますし、 目のすぐ近くですから、片眼のみにしか見えていません そういう見え方はどういうふうに認識されるでしょうか 答は二つで、見えているが気にしていない、か、見えているが、近くになにかあるくらいにしか思っていない、です そして、何かあるなと思ってよく見ようとすると、見えなくなります よく見ようと目を動かした場合、中心窩で見ることになりますが、 中心窩はピンぼけの微妙な明るさの違いを認識する能力がありません これが理由の一つですが、実際の所はもう一つの理由によるものの方が多いと思います すなわち、その埃は次の瞬間(次に光る時)にはそこにいない、というものです 埃は大気より重いにかかわらず、大気中を浮遊しているのですから、大気の動きに敏感です 例え無風状態であったとしても、人間の体温が原因の熱対流や、瞬きによる空気の動き、 あるいは眼球の動きによる空気の動きでさえ、埃を視界から運び去ることが出来るかもしれません 若しくは、睫毛に引っかかって睫毛と区別がつかなくなる(次に光るのが無くなるか、光りっぱなしになる)とか もっとも、カメラに写ったカメラのレンズの直前の埃そのものは人の目では見えないのは当たり前なんですけどね なぜなら、それは人の目の直前にはないからです つづく ================================================ オーブ弐拾弐 以上で、青い猫さんの第五の主張の回答になるかと思います ・埃や雨滴であれば肉眼で見れるが、写真に写った玉模様は肉眼では見えないものが写った(>>62) 雨滴はさておいて、埃は肉眼で見えるが、埃を写そうとした写真でなければ、埃が写らないのは当然 また、写真に写った肉眼では見えないものは、カメラの直前にあったもので、目の直前にはいないので見えないのは当然 ということになりましょうか さて、最後に残った青い猫さんの第三の主張 ・その6は水滴でないことは確認済みで、他の雨天時の撮影(フラッシュで複数の玉再現)と異なる(>>42) というものですが、これって私には他の埃の強反射が写ったものとの区別がつきません 水滴とか、雨滴とかとは関係ないんじゃないでしょうかね ざーざー降りならともかく、粒が大きくてまばらな存在である雨滴に、 さほど大気中の埃を洗い落とす能力があるともおもえませんし (雨滴のまわりの空気の流れで、埃は雨滴に接触せずにかわしちゃうと思うし、埃によるけど) つづく ================================================ オーブ弐拾参 オーブ五で雨滴の形状をご存じですかと書きましたが、ある程度以上の大きさの雨滴は 底が窪んだ中華まんのような形をしています 空気抵抗によって、多少ふらふら形状を変化させながら落下していきますし、落下の途中で 分裂したり、合体したりしますんで、きっちりこの角度でというわけにはいきませんが、 ある程度の角度の範囲で太陽の光を反射したり屈折させたりします フラッシュ撮影の場合も反射や屈折の角度がある程度の範囲内ですので、雨天時の撮影で このような反射や屈折が写真に写る角度で起これば、それは写真に写りますし、 焦点より近いところで起こったものは、ピンぼけでぼやっとした玉状に写ります その場合、単独で写ることはまず考えられません 大きな玉が一つだけってのがあったとしても、それはたまたまその雨滴だけがカメラの 直前を落下しただけで、その近傍にはもっと小さな玉とか、反射なり屈折なりがきちんと ピントがあって見えている雨滴があるはずです 粒の小さな雨滴はほぼ球形で、さらに小さな物は落下速度も遅く、まるで浮遊しているように 見えるのもありますが、球形での反射屈折のほうが、その球のおおきさに関わらず、その 角度の範囲は狭くなりますので、中華まん雨滴と同様のことが言えます もっとも、とても小さな雨滴は結果としての光の強さが不充分で、カメラから離れたものは 写らない可能性があります が、小さな雨滴はその数においては中華まん雨滴よりもはるかに多いですから、単独で写る 可能性は低いと考えます つづく ================================================ オーブ弐拾四 さて、雨滴水滴の場合もそうですが、太陽の光だけで撮影した物と、フラッシュを使って 撮影した物の違いについても簡単に書いておきましょう フラッシュと呼ばれる物は、フラッシュバルブ(閃光電球)によるものと、 ストロボ(商標が一般名詞化したもの)とよく呼ばれるエレクトロニックフラッシュの二つに大別されます 現在ではフラッシュバルブは見かけることも少ないですが、極短時間に大光量の光を発生させるという機能に差はありません 基本的にはシャッターが開いている状態で、フラッシュを光らせ、その後シャッターを閉じるようにします フラッシュの発光時間は極めて短いため、写真に写る光の強さはシャッター速度とは関係なくなります 絞りはカメラと被写体までの距離に依存します カメラレンズとフラッシュが近い場合はほぼ正対、フラッシュがカメラレンズから離れている場合でも 適切な角度で埃の反射平面が位置していたら、太陽光の場合と同様に強反射が起こります また、埃に当たる光自体がカメラからの距離の二乗に反比例しますので、カメラから離れた埃の強反射は 太陽光の場合よりもより小さくなります 被写体より離れた背景が写りにくいのも同じ理由ですね あと、事前に肉眼で被写体やら背景やら埃やらがどのように写るかの確認ができない(想像するしかない)のが違いますかね あとは太陽光の場合の応用問題として解けると思います まだつづく ================================================ オーブ弐拾五 さて、所謂オーブに関しての私の見解は以上で終わりです 端折ったところもかなりおおいんで、判りにくいとか、なんでやねんというところがあったら 何なりと聞いてもらってかまいません (一言「間違ってるし」のようなものには回答しようがないので、この件については敢えて  通告なしで無視しますんで、そこんとこ、予めご容赦下さい) で、私自身はオーブというような言い方はしていませんでしたが、このような 意図していないものが写真に写らないようにするにはどうしたらいいのか、 ってなことを検討していた時期がありまして、上の理屈はその時の理屈をまぁひっくりかえして 書いたようなものです 当時の私としては、こういうふうにすれば、意図していないものが写りにくいというのを考え出し、 実際にそうやってみたら、確かに写る回数が減った、ということで実証終わりだったんですが、 今回はそれをもって上に述べた仮説は実証済み・・・と言う訳にはいかないでしょうね かと言って、私がこれからその実証を行う気はさらさらありません よりぶっちゃけて言うと、そこまでの義理はありません そうですから、私の仮説を証明したい方や、私の仮説が間違っていることを証明したい方は、 ぜひとも確認のための実験をするとか、別の仮説を立ててみるとかして頂きたいと思います つづく ================================================ オーブ弐拾六 そして、もし私の仮説が正しくないという実験結果が出たなら是非とも教えていただきたいです まぁ、実験って言っても、そう難しく考える必要はないでしょうけどね 気をつけることは、 ・所謂スポットで行っても無意味(仮説の証明にはなんら役に立ちません) ・背景は不要(反射の具合と、カメラの設定だけの問題ですから背景は解析の邪魔になるだけです、濃いめの単色カーテンみたいなのでOK) ・同一条件で沢山撮影する(確率の問題ですから、結果に有効性を持たせるためのサンプル数が必要です) ・人為的に埃を立てない(埃が多い方がはっきりするだろうなどと考えないことです、過度の埃は静まるのも早いですから、同一条件が維持できません) ・一度に多くのパラメータをいじらない(例えば、シャッター速度だけを変えて、その影響を見てみると言うようにしましょう) ってなことですかね まぁ、きちんと客観的なデータとやらが取れることを念頭に置いて実験方法を考えればいいと思います ただね、いくらこのような仮説を立てて、それを実証したところで、 この仮説以外の理由ではこのような現象は起こりえない、ってのを実証しない限りは 何にもならないんですけどね おしまい ================================================ オーブおまけ壱 忘れていました >>136の物陰に隠れるオーブ これは、そういう写真をみたことないんで、なんとでも言えるんですが、 ちゃんと写っているにもかかわらず、隠れているように見えるって可能性が高いかな 隠れているように見える当たりの光量の分析をすれば、判るかも知れません あと、可能性としては、光が全部写りきる前にシャッターが閉じたか、 シャッターが開く前にすでにある程度の光がおわっちゃってたとか >>172の肉眼で見るオーブ 今一、どういう状態なのかが理解しにくいですが、 眼鏡のパッドの金属支柱の反射光の一部が、眼鏡レンズの どこかで反射・屈折して、目の中に飛び込んで、 網膜の周辺部にピンぼけの像を作っただけとちゃうんかなと思います 金属支柱って、円形断面で曲げてあるやつですよね 直接目に見える反射光は一つとしても、二三カ所で最終的に 目の中に飛び込む反射光があっても不思議じゃないんじゃないかなぁ おまけ壱おわり 2008 (c) Copyleft JIYA